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    プレスリリース

    ナノ粒子中のサブパーセントの局所ひずみを捉える解析手法を開発 ―電子顕微鏡とデータ科學による究極の精密測定―

    JAIST 九州大學
    國立大學法人 北陸先端科學技術大學院大學
    國立大學法人 九州大學

    ナノ粒子中のサブパーセントの局所ひずみを捉える解析手法を開発
    ―電子顕微鏡とデータ科學による究極の精密測定―

    ポイント

    • 電子顕微鏡とデータ科學を組み合わせることで、局所ひずみを高精度に測定
    • 0.2%というわずかな局所ひずみをも検出できる精密さを達成
    • 棒狀ナノ粒子には表面形狀の曲率変化に起因する約0.5%の局所膨張ひずみが生じることを発見
     北陸先端科學技術大學院大學?先端科學技術研究科 応用物理學領域麻生 浩平助教大島 義文教授と、九州大學?大學院工學研究院のJens Maebe大學院生 (修士課程、當時)、Xuan Quy Tran研究員、山本 知一助教、松村 晶教授は、原子分解能電子顕微鏡法とデータ科學的手法であるガウス過程回帰を組み合わせることによって、ナノメートルサイズの粒子の中のわずか0.2%という局所ひずみを測定できる解析手法の開発に成功しました。開発した手法によって金のナノ粒子を解析したところ、棒狀の粒子の內部では、先端付近で長さ方向に0.5%膨張したひずみを見出しました。この膨張ひずみは、粒子の先端部分で表面の形狀(曲率)が変化しているために生じたこともわかりました。ナノ粒子の形狀に由來して內部に局所ひずみが生じるという新たな発見と、ひずみを精密に捉える新規な手法は、ナノ物質內での原子配列と機能の理解に役立つと期待されます。
     本研究成果は、2021年7月7日(米國東部標準時間)に科學雑誌「ACS Nano」誌のオンライン版で公開されました。

     本研究は、日本學術振興會(JSPS)科研費基盤研究(B) (25289221、18H01830)と科學技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業 ACCEL「元素間融合を基軸とする物質開発と応用展開」(研究代表者:北川 宏、研究分擔者:松村 晶、プログラムマネージャー:岡部 晃博、研究開発期間:2015年8月~2021年3月、(JPMJAC1501))の支援を受けて行われました。

    【研究背景と內容】

     わずかな原子間距離の局所変化 (局所ひずみ) によって、磁性や觸媒特性などといった様々な材料物性が左右されます。そのため、材料の局所ひずみを精密に測定する手法が求められてきました。ここ20年間で走査透過電子顕微鏡(STEM)の空間分解能が大きく向上して、原子狀態の観察と解析が可能になりました。ナノメートルサイズの金の粒子をSTEMで観察したのが図1aです。ナノ粒子の內部に原子位置に対応した明るい點が整列して現れて見えます。原子は一見すると結晶構造を作って規則正しく周期的に配列しています。

     しかし、図1aのSTEM像から原子の位置を特定して詳しく解析すると、場所によって原子は周期配列からわずかにずれて変位していることがわかりました。それをマップにしたのが図1bです。紙面左方向に大きく変位する原子が暗い青、紙面右方向に大きく変位する原子が明るい黃色でそれぞれ表されています。マップを遠目から見てみると、左から右手に向かって滑らかに、青色から黃色へと変化しているように見えます。しかし局所的には波のような細かい変化が全體を覆っています。この細かな変化は、像から原子位置を正しく特定できなかったために含まれる揺らぎノイズで、変位の変化率に相當するひずみを求めるうえで大きな障害になります。このノイズ成分を低減するには、長い時間 (カメラの露光時間に相當) をかけて計測して像質を改善するのがこれまでの一般的方法でしたが、計測時間が長くなるとその間の裝置の機械的?電気的な狀態のわずかな亂れの影響で像がゆがんでしまうという問題がありました。

     そこで研究グループは、様々な分野で活用されているデータ科學手法のガウス過程回帰に著目しました。ガウス過程回帰では、データの真の姿は滑らかに変化すると仮定して、観測データにはこの真の姿に細かな揺らぎノイズが付加されていると考え、この順序をさかのぼることでデータの真の姿を予測します。ガウス過程回帰を図1bのマップに適用したところ、滑らかに変化する主要な成分だけを取り出すことに成功しました (図1c)。得られた変位の棒の長さ方向の変化率を求めて、局所的なひずみの分布をマップしたのが図1dです。開発した手法の精度を確かめるために、元データから直に、およびガウス過程回帰を適用して求めた場合のひずみ値の分布を比較したのが図1eです。元データでは標準偏差で1.1%の広がりがあるのに対して、ガウス過程回帰を用いることでその広がりが0.2 %に狹くなっており、ノイズ成分の除去によって有意に観測されるひずみ量の下限が大きく改善しました。

     図1dに戻って見ると、棒の胴體部分と先端の半球部分の境目付近が明るい黃色になっており、この部分では棒の長さ方向に約0.5%膨張した局所ひずみが生じています。ナノ粒子では、表面積を小さくしようとして表面から內部に向かって力が作用するために、収縮ひずみが生じていると考えられていました。しかし、円筒狀の胴體部と半球狀の先端部からなる棒狀の粒子では、2つの部分の表面曲率が異なることから內部にかかる力の向きと大きさに違いが生まれて、局所的に膨張するひずみ場が生ずることがわかりました。このように、原子位置の精密な解析が可能になって、ナノ粒子の局所形狀によって內部のひずみの狀態が変化することが発見できました。この新たな発見と、本成果で生み出された精密な解析手法は、ナノ構造材料の原子配置とそれによって引き起こされる機能に関する理解を深めることにつながると期待されます。

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    図1 (a) 棒狀金ナノ粒子のSTEM像。明るい點が原子位置に対応している。
    (b) 元データから得た原子変位マップ。紙面左方向への大きい変位が暗い青、紙面右方向への大きい変位が明るい黃色で表示される。細かく変化するノイズ成分が目立っている。
    (c) ガウス過程回帰によって予測された真の変位。ノイズ成分の除去に成功している。
    (d) 紙面橫方向の変位の変化率(局所ひずみ)マップ。明るい黃色になっている両端部分では膨張ひずみが生じている。
    (e) 元データとガウス過程回帰後のひずみ分布。ガウス過程回帰を用いることで、分布の広がりが1.1%から0.2%にまで狹まっており、微小な局所ひずみの検出が可能になった。

    【研究資金】

     ?日本學術振興會(JSPS)科研費 基盤研究(B)(25289221、18H01830)
     ?科學技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業ACCEL (JPMJAC1501)

    【論文情報】

    雑誌名 ACS Nano
    題名 Subpercent Local Strains Due to the Shapes of Gold Nanorods Revealed by Data-Driven Analysis
    著者名 Kohei Aso*, Jens Maebe, Xuan Quy Tran, Tomokazu Yamamoto, Yoshifumi Oshima,Syo Matsumura
    掲載日 2021年7月7日(米國東部標準時間)にオンラインで掲載
    DOI 10.1021/acsnano.1c03413

    令和3年7月13日

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