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    プレスリリース

    新型コロナウイルスの重癥化に関與するタンパク質ORF8の特異な性質を発見

    logo_ipu2021.png logo_jaist2021.png 石川県公立大學法人 石川県立大學
    國立大學法人 北陸先端科學技術大學院大學

    新型コロナウイルスの重癥化に関與するタンパク質ORF8の特異な性質を発見

    新型コロナウイルスの重癥化に関與するタンパク質ORF8は、過酷な環境下でも高い安定性、復元力を保つという特異な性質を持つことを発見しました。ORF8は、70度においても天然狀態を保持し、70度以上で変性させても、溫度が下がると天然狀態に戻ること、酸性條件で変性するが、弱アルカリ條件にすると天然狀態に戻ることを明らかにしました。

    【概要】

     石川県立大學 森正之準教授が中心となり、今村智弘講師、東村泰希準教授、松本健司教授および北陸先端科學技術大學院大學 生命機能工學領域大木進野教授と共同で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の重癥化関與タンパク質ORF8の特異な性質を発見しました。本研究成果は、速報誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」に公開されました。

     SARS-CoV-2が引き起こす新型コロナウイルス感染癥(COVID-19)は、基礎疾患や肥満の罹患者が重篤化しやすく、全世界で大問題となっています。新型コロナウイルスが持つORF8タンパク質は、SARS-CoV-2において特徴的なタンパク質です。これまでの解析により、ORF8は、免疫機能に重要な役割を持つMHCクラスIタンパク質の働きを抑え、細胞障害性T細胞を介した免疫応答を損なう働きがあることが報告されております。さらに、ORF8遺伝子領域が欠失したSARS-CoV-2株や1つのアミノ酸殘基が変異したORF8(L84S)を持つウイルス株では、重癥化しにくいことが報告されています。このことから、ORF8タンパク質は、COVID-19の重癥化に関與することが示唆されています。

     ORF8タンパク質は分子內に3か所のジスルフィド結合(S-S結合)を持ち、さらにS-S結合で二量體になる複雑なタンパク質です。そのため大腸菌での均一なORF8の合成は極めて困難です。しかし、我々は、タバコ培養細胞(タバコBY-2細胞)を用いて均一なORF8タンパク質の大量合成に成功しました(図1)。

     タンパク質は一般的に、熱や酸、アルカリの影響を受けると、ひもが絡まったような変性という狀態になって沈殿します。通常は、生卵が加熱されるとタンパク質が変性しゆで卵になるように、いったん変性したタンパク質は元の狀態に戻りません。ORF8タンパク質がどのような條件で変性するかはその機能を知るうえで重要です。そこで、本研究では、タバコBY-2細胞で合成した野性型ORF8と変異型ORF8(L84S)の溫度およびpHを変化させORF8の狀態変化を核磁気共鳴(NMR)裝置で解析しました。その結果、ORF8は耐熱性がとても高く70度付近まで天然狀態を保持し、70度以上で変性しました。しかし、一般的なタンパク質と異なり、溫度を下げると天然狀態に戻ることがわかりました(図2)。またORF8は、弱酸性條件で変性してしまうこと、中性條件に戻すと元の天然狀態に戻ることがわかりました。これらの結果は、ORF8が特別安定なタンパク質であることを意味します。また、興味深いことに、変異型ORF8(L84S)はORF8に比べて熱および酸への耐性がより高いことがわかりました(図2)。これらの特異な性質は、OFR8の機能と関係していることが予想されます。今後、この知見をもとにした解析を行うことにより、COVID-19の重癥化をおさえる治療法が確立される可能性が期待されます。

    【発表論文】

    論文タイトル Similarities and differences in the conformational stability and reversibility of ORF8, an accessory protein of SARS-CoV-2, and its L84S variant
    論文著者 Shinya Ohki; Tomohiro Imamura; Yasuki Higashimura; Kenji Matsumoto; Masashi Mori
    雑誌 Biochemical and Biophysical Research Communications

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    図1 タバコ培養細胞を用いたORF8タンパク質の大量生産
    タバコBY-2細胞で生産したORF8タンパク質は全て二量體を形成する。(A) ORF8タンパク質を合成するタバコBY-2細胞 (B)タバコBY-2細胞の大量培養 (C)培養液中に放出されたORF8タンパク質 (D)精製しNMR解析に用いたORF8タンパク質。WT:野生型ORF8タンパク質、L84S: 変異型ORF8タンパク質、矢じり:ORF8タンパク質、M:分子量マーカー

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    図2 ORF8 (wild type)とその変異體L84Sの各溫度での1H-NMRスペクトルのメチル基領域の拡大図 *印は、昇溫後に再びその溫度に戻したことを表す。
    ORF8、L84Sともに70度くらいまではスペクトルに大きな変化が見られない。これは、立體構造が保持されていることを示している。ORF8では70度、L84Sでは75度のときにピークが広幅化し、特に0 ppm付近ではピークが消失しかかっている。これは、試料が多量體化もしくは會合により熱変性狀態になったことを示している。ところが、両試料ともに溫度を下げたときのスペクトルは実験開始時のスペクトルと一致している。これは、変性狀態の試料が天然狀態に戻ったことを示している。

    【用語説明】
    細胞傷害性T細胞:リンパ球T細胞の一種。異物となる異常細胞(ウイルス感染細胞、がん細胞など)を認識し、それらを攻撃して破壊する細胞。
    MHCクラスIタンパク質:免疫応答に関わるタンパク質。細胞內のタンパク質に由來するペプチド斷片を細胞表面に輸送し、細胞障害性T細胞に提示するタンパク質。
    ジスルフィド結合(S-S結合):2つのシステインによって形成される共有結合で、タンパク質の立體構造形成に重要な役割をはたす。
    二量體:2個のタンパク質が、物理的?化學的な力によって形成した分子。
    核磁気共鳴(NMR)裝置:強力な磁場中に置いた試料に電磁波を照射して応答信號を得る裝置。信號を解析することで、試料の構造や運動性を知ることができる。

    令和3年6月9日

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