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    プレスリリース

    高分子薄膜における水素イオンの界面輸送で新知見

    JAIST名古屋工業大學 立教大學山形大學
    國立大學法人 北陸先端科學技術大學院大學
    國立大學法人 名古屋工業大學
    學校法人立教學院 立教大學
    國立大學法人 山形大學

    高分子薄膜における水素イオンの界面輸送で新知見

    ポイント

    • カルボン酸基の濃度を制御した弱酸性高分子を合成し、水素イオンの輸送を薄膜狀で評価
    • カルボン酸基は、少なくとも二種類の狀態で存在
    • カルボン酸基が低濃度になると、カルボン酸基が薄膜界面により多く存在
    • カルボン酸基の濃度の低下に伴い水素イオンの輸送経路は內部輸送から界面輸送が支配的
     北陸先端科學技術大學院大學?先端科學技術研究科 物質化學領域長尾 祐樹 準教授、スワンスントン アトチャヤ氏(大學院博士後期課程在籍)は、名古屋工業大學?大學院工學研究科 生命?応用化學専攻の山本 勝宏 準教授、立教大學?理學部の永野 修作 教授、山形大學?學術研究院(理學部主擔當)の松井 淳 教授との共同研究で、燃料電池や生體活動等で重要となる水素イオンの輸送において、モデル高分子薄膜のカルボン酸基の濃度を制御することで、水素イオンの輸送経路が薄膜內部と界面で切り替わる現象を発見しました。本成果により、エネルギー変換システムの高度化やイオンを能動的に制御するための界面分子設計に関する研究の加速が期待されます。
     本研究成果は、2021年5月21日(英國時間)に電気化學會刊行のElectrochemistry誌のオンライン版で公開されました。なお、本研究は日本學術振興會(JSPS)科研費基盤研究(C)、科研費基盤研究(B)、科研費 新學術領域研究「ハイドロジェノミクス」の支援を受けて行われました。

    【研究背景と內容】

     生體系ではタンパク質等の高次構造が、イオン輸送チャネルの制御を行い、イオン輸送の外場刺激応答を実現しています。また、生體材料界面でのイオン輸送は1960年代から議論が続いています。この機能を人工的に設計?構築することは未だ容易ではありません。長尾準教授らは、イオンの中でも水素イオンに著目し、水素イオンを人工的かつ能動的に制御するための要素技術に関して研究を推進してきました。
     酸の素である水素イオンは、材料中を輸送されることで燃料電池や生體活動等のエネルギー変換システムで重要な役割を果たします。この水素イオンは、材料內部の非常に小さなスケールの通り道に沿って輸送されると考えられてきました。近年、エネルギー変換システムの高度化に伴い、高性能化のために材料の內部だけでなく端(エッジ)である界面の分子設計も重要視されています。しかし、材料界面における水素イオンの輸送に関する基礎研究は十分に行われていません。今回長尾準教授らは、生體材料ではなく、酸の素の一種であるカルボン酸基の濃度を制御した合成高分子を用いて、薄膜中の水素イオンの通り道について研究を実施しました。その結果、水素イオンが薄膜內部を通る道が不足すると、水素イオンは薄膜の表側と裏側に相當する薄膜界面に沿って輸送されることを明らかにしました。
     本研究では、ポリスチレンと呼ばれる高分子の側鎖にカルボン酸基が化學修飾された高分子を合成しました(図1)。比較のためにカルボン酸基の濃度を高いものから低いものまで四種類合成しました。高分子を薄膜化し、赤外線を用いて分子構造を調べた結果、酸の素となるカルボン酸基の狀態が少なくとも二種類あることがわかりました。一つはカルボン酸基が単體で存在する狀態(フリーな狀態)、もう一つは二つのカルボン酸基がお互いに向き合った二量體で存在する狀態(ダイマー狀態)でした。ダイマー狀態は、二つの水素イオンが二つのカルボン酸基に挾まれた狀態となり、水素結合と呼ばれる結合で安定化されています。研究グループは、カルボン酸基の濃度を高くすると、フリーな狀態のカルボン酸基の量が相対的に増加し、ダイマー狀態のカルボン酸基の量が減少する傾向を見出しました。さらに、カルボン酸基の濃度が低い場合には、フリーなカルボン酸基が薄膜の內部ではなく界面により多く存在することも明らかにしました。高分子薄膜中ではカルボン酸基は均一に存在しておらず、その濃度によって存在狀態が異なることもわかりました。
     この結果から研究グループは、カルボン酸基の濃度を低くすると、薄膜界面にフリーなカルボン酸基が集合し、水素イオンが薄膜內部ではなく界面に沿って輸送される仮説を検討しました。具體的には、水素イオン輸送の性能指標の一つにあたる水素イオン伝導度の評価を、インピーダンス法と呼ばれる手法を用いて実施しました。結果は仮説を裏付けるものであり、カルボン酸基の濃度が高い薄膜では、水素イオンが薄膜內部で輸送されることが支配的であるのに対して、カルボン酸基の濃度が低い薄膜では、水素イオンは薄膜內部ではなく薄膜界面に沿って輸送されることがわかりました(図2)。これはフリーなカルボン酸基が薄膜の內部ではなく界面により多く存在することと、薄膜內部には水素イオンの輸送にあまり寄與しないと思われるダイマー狀態のカルボン酸基が多いためであると考えられます。この結果から、水素イオンは材料內部を必ずしも通らずに、通りやすい道があれば材料の端である界面に沿って輸送されることもあることが示されました。

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    図1 本研究に用いた高分子材料

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    図2 高分子薄膜における水素イオンが輸送されるイメージ。內部輸送(上)と界面輸送(下)

    【今後の展開】

     高分子材料中の水素イオンの輸送は、材料內部の通り道に沿って輸送されると考えられてきました。しかし本研究では、酸の素や構造の狀況によっては、水素イオンは材料內部ではなく界面に沿った輸送が支配的になることがわかりました。このイオンの界面輸送は無機材料では既に知られていましたが、高分子材料においても界面輸送が可能であることから、界面の分子設計に活かせる可能性があります。また、これまで説明できなかった水素イオンの輸送現象の理解にアプローチすることもできるかもしれません。特にカルボン酸基は生體活動で重要な役割を擔っています。今後長尾準教授らは、エネルギー変換システムの高度化に加え、イオン輸送の人工的かつ能動的な制御を目指して、得られた知見を活かしていきます。

    【研究資金】

     ?日本學術振興會(JSPS)科研費 基盤研究(C)(JP18K05257)
     ?日本學術振興會(JSPS)科研費 基盤研究(B)(JP21H01997)
     ?日本學術振興會(JSPS)科研費 新學術領域研究「ハイドロジェノミクス」(JP21H00020)

    【論文情報】

    雑誌名 Electrochemistry
    題名 "Interfacial and Internal Proton Conduction of Weak-acid Functionalized Styrene-based Copolymer with Various Carboxylic Acid Concentrations"
    著者名 Athchaya Suwansoontorn, Katsuhiro Yamamoto, Shusaku Nagano, Jun Matsui, Yuki Nagao*
    掲載日 2021年5月21日(英國時間)に著者原稿版がオンラインで掲載
    DOI 10.5796/electrochemistry.21-00042

    令和3年5月28日

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